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2015.07.13 海口晶平

E-コマース

【現場の目線】 ECサイト構築サービスの選び方(後編)

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海口晶平

ECサイト運営事業者、ECシステムベンダーを経て、2014年GMOペイメントゲートウェイ株式会社入社。 現在は、EC通販サイト(流通大手)を中心にお客様の決済システム及び各種EC支援を担当。ECサイト運営とECシステム構築の最前線で培った「お客様視点」を武器に、日々お客様とともにECの「現場」で奮闘中。

こんにちは。ECフロント担当の海口です。

仕事柄「ECサイトを構築/リニューアルしたい!」というご相談を受けることが多いのですが、トレンドの移り変わりや、テクノロジーの進化の早いEC業界においては、いざ依頼先となるECサイト構築サービスやベンダー情報を調べよう…と思っても、そもそも何をどう調べればよいのか?調べたとしても、いったい何をどうやって比較すれば良いのか?等、日々のEC運営業務をこなしながら、最新のトレンドを把握しつつ、全てのサービスを網羅して調べることは容易ではありません(勿論、中には、それをこなしてしまう超人的なEC事業者の方もいらっしゃいますが…)

本日は、そんな「EC現場の最前線」で日々多くのお客様と遣り取りする中から得られた「ECサイト構築サービスの選び方」の「後編」ついて、活きた情報をお届けしたいと思います

「前編」はコチラ。

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「サービスの種別」

先ずは、前回のおさらいも兼ねて
大きなカテゴリーとして…


【1】「大手ECモールへの出店」
【2】「ASP型」
【3】「オープンソース型」
【4】「SaaS型」
【5】「パッケージ型」
【6】「スクラッチ型」

おおよそ上記のように区分できます(更に細かく分けていくと、よりディープな世界が広がりますが…それは、また別の機会にでも!)

基本的には【1】→【6】に進むに連れて、対応するECサイトでの「売上規模」が大きく、比例して「予算感」も大きくなっていくようなイメージです(無論、それぞれのソリューションによっては、同じカテゴリーや、前後のカテゴリーと比較しても、より安いモノ、高いモノもありますが、ここではイメージを掴んでいただくために、大枠で表記してます)

加えて、実際の現場では、当然「現在のECサイト売上」「システム投資の予算感」はもとより「新規構築・リニューアルで【実現したい要件】」に応じて、対象となるサービス・ベンダーを絞っていきますが、以下の段落では、その指標となる「各●●型」の「特徴」「メリット・デメリット」について、「後編」となる本日は【4】【5】【6】の各カテゴリー毎にご説明します。

【4】「SaaS型」

クラウドサービスの進化により、昨今ECサイト構築サービスでも多く見かけられるようになったのが「SaaS型」の活用です。「SaaS」とは「Software as a Service」の略で、ソフトウェアをユーザー側に導入するのではなく、ベンダー側で稼働しているソフトウェアの機能をユーザーがネットワーク経由で活用する形式を意味します(ECサイト構築サービスの観点では、広義の意味で「カスタマイズASP」も、ここに含むことができると思います)

「SaaS型」にも様々なサービス形態が存在しますが、簡潔に特徴を表現すると「従量課金=使ったら使った分だけの課金」であること、他のクラウドサービスと同様に自社側で「設備を保有しない」ことが大きな特徴であると言えます。

このクラウドならではの概念により、ベンダー側の更新作業により(ある意味、自動的に)日々システム・サービスがバージョンアップしていく「最新性」と、ベンダー側がAPIの公開を行なうことにより、個社別のカスタマイズや、各種EC関連ソリューションとの連携なども可能にする「拡張性」を兼ね備えており、これらの特性から「近い将来、EC事業の拡張が見込めるものの、先ずは初期投資は抑えてスモールスタートを実現したい!」というようなケースを中心として、主に「中規模から大規模サイトまでの事業者さま」で活用されています。

メリットとしては、上記のように「拡張性」と「最新性」を担保できるため、初期投資におけるバランスが取りやすく(=スモールスタートし易い)先ずは最低限の標準機能をベースにECサイトを構築し、その後の事業拡張のステージに応じて、個社向けのカスタマイズや、基幹システム等の各種関連システムとの連携を段階的に実装していく…といったアプローチが取れること、また、データセンター等のインフラを自社で用意・維持する必要がなく、更には「アクセスの急増時にだけ増やす(逆に閑散期には減らす)」といったクラウドならではの「使ったら使った分だけ」の無駄のない料金体系を含めた「柔軟性」が魅力です。

デメリットとしては、自社側に「保有」するのではなく、ベンダー側にあるものを「利用」する形式になるため、自社のセキュリティポリシー及び要件(ex:自社側にサーバを置くことが義務付けられてる等)によっては、そもそも採用自体が困難なケースもあること、また、バージョンアップやカスタマイズの「スピード感」については、自社で完全にコントロールできる訳ではなく、ベンダー側に依存する部分が多くなること、スモールスタートが可能とはいえ「ASP型」のサービスと比較すると、自由度が高い分(要件にもよりますが)初期投資として数百万円以上は必要になるケースが大多数のため、これらの点については事前に留意しておく必要があります。

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【5】「パッケージ型」

ECサイト構築を検討する際、必ず一度は候補に挙がるのが「パッケージ型」かと思います。「パッケージ型」の中でも様々な特色がありますが、基本的には、ECサイト構築に必要な各種標準機能を有したパッケージ(ソフト)を購入、自社で用意したサーバーにインストールして使用するタイプです。

パッケージ自体の完成度もさることながら、システムを自社で保有することが前提となっているため、パッケージのベースを活かしつつ「個社特有のカスタマイズ」や「各種関連システムとの連携」などを高い自由度の中で行なえるので「企業固有の強み(ex: ブランドの世界観・特殊な販売手法・複雑な業務フロー等)」をECサイトにおいても自由に体現できること、また、パッケージ型のベンダーの多くは、業界業種毎に専門性の高いカスタマイズ実績と方法論を「事例」として豊富に保有しているため、サイト構築だけに留まらない、EC事業の成功に必要な「ノウハウ」までを含めて提供が可能なことも大きな特徴と言えるでしょう。

その特性上、より機能・業務要件が複雑・高度化する「中規模から大規模サイトの事業者さま」で採用されるケースが多くあります。

メリットとしては、上記の通り、導入実績にも裏打ちされた中~大規模サイトでの「可用性」と、パッケージならではの品質の安定、セキュリティ面での「堅牢性」が担保されていること、更にそのベースに加えて「拡張性(高い自由度)」も持ち合わせているため、個社特有のカスタマイズにより、競合他社との差別化を図るための「独自性」のあるECサイト(+独自の業務フローに最適化したバックエンドのシステム)を実現することが可能な点が挙げられます。

デメリットとしては、データセンターやサーバー等を自社で選定・用意する必要があり、その点での専門的な知識や技術が求められること(データセンターまで提案内容に含まれるケースもありますが)、個々の企業への導入、個社ごとの独自開発を前提としているため、独自のカスタマイズを行なっている場合には、パッケージ自体のバージョンアップの恩恵が受けられなかったり、個社向けに開発した新機能を全てのユーザーに反映する…といったことは基本的にはありません。また実現できることが多くなる分、一般的には他のASPやSaaS等の「型」と比較すると、「コストと構築期間」が「高く・長く」なる傾向にあります。

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【6】「スクラッチ型」

最後にご紹介するのが「スクラッチ型」です。一言で言えば「0」からシステムを構築していく手法です。特定のパッケージ製品のカスタマイズや、何かベースを持って機能開発を行なうのではなく、すべての要素を個別に最初から構築・開発するような形態を指します。一概には言えませんが、基本的にはSaaSやパッケージ等の「型」では実現できないような特殊性の高い要件を有する場合、また年商が数百億規模となるような大規模ECサイトにおいて採用されています(また少し話が逸れてしまいますが、昨今では、自社でECサイト開発の「内製」を行なうようなケースにおいても採用されるケースが多くなってきている印象です)

メリットとしては、その企業独自の業務フローに合わせて、完璧に最適化したシステムの構築が可能で、非常に細かな機能まで好みに応じて自由に設計、開発することができます。また基本的には制限がないので、各種関連システムとの連携等についても、自由に繋ぎ合わせることで、他の「型」では実現できないような、先進的なシステムや、大規模な仕組み等を実現することが可能です。

デメリットとしては、制限がない反面、まさに「0」から作り上げていくため「仕様を決める」「プログラムを実装する」といった工程に時間を要するケースが多く、既存のシステムや製品をベースにしていない分、品質的に安定させることが難しいという側面もあります。また、自由度が高いがゆえに、事業拡張や事業の急展開に応じて、無理やり作り込んで「ツギハギ」になってしまうようなケースもあり、そうなると追加開発時における影響範囲の特定等が困難になり、結果として、ECのトレンドに対応する「スピード感」が失われるような事態が起こりえるリスクも含有していることには留意する必要があります。

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まとめ

「前編」「後編」に渡り、大きなカテゴリーでの「型」を紹介してきましたが、どの「型」にも、それぞれの特徴があり「メリット」「デメリット」があります。

大切なことは、どの「型」が「良いか」「悪いか」で選定するのではなく、どの「型」が「自社のECサイト・EC事業で実現しようとしてること」に「合うか」「合わないか」という観点で考え抜くことです。もし迷われた時には、是非そこに立ち返ってみて下さい!

ECの「現場」に居るからこそ、「分かること」「お客様に教えていただけること」が沢山あります。今後も可能な限り、そんな「現場」の貴重な情報をお知らせしていきたいと思います!(とはいえ、公の場で言える内容には限界もありますので…より詳しい情報や成功事例に
ご興味がある方は、いつでもお問合せ下さい!)

それでは、また次回!!