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倉本北斗
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- 【洗替とは?】月額課金サービスのクレジットカード決済の基本と今後のトレンド - 2016年8月10日
はじめまして。GMO-PGの倉本と申します。
今回は月額課金サービスにおけるクレジットカード決済の運用方法についてご案内させていただきます。なかなかわかりにくい「洗替(あらいがえ)」を利用した運用方法ついても、できるだけ噛み砕いてご説明させていただきます。
基本の運用:「全件オーソリ運用」
典型的な月額課金サービスの決済業務は次の3つのフェーズから構成されます。
1.登録(カード情報登録)
2.課金(登録済みカードへの課金)
3.アフターケア(登録カードの変更等)
大前提として、クレジットカード決済の基本ルールは、あるユーザーに980円の会費を課金したい場合、課金するタイミングでカード会社に問い合わせを行い、有効期限を確認の上、980円分のオーソリ(=与信=カード会社のお墨付き)が取得できれば売上計上できる、というものです。
この基本ルールに則って、毎月、全ての課金対象者のオーソリを取得する運用を「全件オーソリ運用」と呼びます。
避けられない問題:有効期限エラー
クレジットカードには有効期限があるため、しばらく順調に課金できていたユーザーも、どこかのタイミングで有効期限エラーになってしまいます。有効期限エラーになったユーザーに対しては、アフターケアの一環として、カード情報を更新していただく、あるいは、別のカードを登録していただく等の対応をお願いする必要があります。
サービス立ち上げ当初の有効期限エラーは少ないですが、数年もすれば毎月課金するユーザーのうち5%前後が有効期限エラーになる場合もございます。5%というと、ユーザーが1000人いれば50人に相当します。すぐに連絡がつかない場合もありますし、ユーザー自身に能動的にアクションしてもらわなければならないので、50人でもなかなか大変ですよね。(5人でも大変かも知れません…)
このように、有効期限エラーは毎月の運用にあまり手をかけなくない事業者様にとって悩ましい問題なのです。
有効期限エラー率を下げるための工夫:洗替とは?
そこで、少しでも有効期限切れエラーを減らすための工夫として「洗替」という方法があります。
洗替とは、月に1回カード会社に問い合わせを行うことで、クレジットカードの有効性(そもそも存在するか/使える状態か)のOK/NG結果を確認すると同時に、可能であれば登録済みクレジットカードの有効期限等を更新する作業です。「可能であれば」と申しあげましたが、OK/NG結果の取得だけでなく、有効期限等クレジットカード情報の更新まで行われるのは、ユーザーが登録したカードの発行会社(例えば三井住友カードや三菱UFJニコス)と決済代行会社(事業者様の決済アカウント)がシステム面(及び契約面)で接続している場合です。
カード発行会社は、メジャーなところからマイナーなところまで、世の中にたくさん存在しますので、ユーザーが登録したクレジットカードの発行会社が決済代行会社に接続していない場合は、有効期限等は更新されません。ただ、この場合でも有効性の確認は行われるので、洗替結果としてのOK/NGは返却されます。
この洗替を利用した月額課金の運用方法は、下記の2通りございます。
A.洗替+オーソリなし運用
B.洗替+全件オーソリ運用
これまで日本における月額課金サービスではAの運用方法が主流でしたが、カード決済を取り巻く状況の変化により、今後はBの運用方法が主流になると予想されます。
次に、AとBそれぞれの運用についてご説明いたします。
「洗替+オーソリなし運用」とは?
「洗替+オーソリなし運用」とは、ある一定の条件を満たせば、オーソリを取得せずに売上をあげることができるというもので、クレジットカードの基本ルールからすれば、かなり特殊な運用方法となります。
ある一定の条件とは、次の2つです。
①課金を行う前月の洗替結果がOKであること
(新規会員の場合は新規登録時の有効性確認の結果がOKであること)
②課金金額がフロアリミット(=カード会社が設定する上限金額)以内であること
この運用方法のメリットは、なんといっても、フロアリミット内であればオーソリなしで課金が可能なため、有効期限切れエラーによるNG率が非常に低いという点に尽きます。しかし、次にご説明するカード決済を取り巻く状況の変化により、徐々にデメリットも目立つようになってきました。
カード決済を取り巻く状況の変化
前述の通り、「洗替+オーソリなし運用」は、クレジットカード決済の基本ルールから外れた特殊な運用であり、実は世界でも稀な日本独特の商慣習でもあります。そのため、クレジットカード業界のルールを定めているVISA/MASTER等の国際ブランドからは、グローバルスタンダード、つまり、きちんとオーソリを取得する運用に変えてほしいという要請が以前からありました。加えて、近年のデビットカードやプリペイドカードの普及が、「洗替+オーソリなし運用」に新たな課題を投げかけています。
「洗替+オーソリなし運用」はそもそもクレジットカード限定の運用方法のため、デビットカードやプリペイドカードを使用した場合、売上が認められない、あるいは、一度認められても後から取り消されてしまう(=チャージバックになる)という事象が発生します。デビットカードやプリペイドカードの番号体系は基本的にクレジットカードと同じであるため、登録される段階でブロックすることが非常に困難なのです。
このような背景から、次に説明する「洗替+全件オーソリ運用」が今後主流になっていくと予想されます。
「洗替+全件オーソリ運用」とは?
「洗替+全件オーソリ運用」とは、その名の通り、毎月の洗替は行うものの、課金する際は、クレジットカード決済の基本ルールに則り、全件オーソリを取得する、という運用方法です。この運用方法だと、洗替による有効期限等の更新というメリットを享受しつつ、後からチャージバックになるリスクも減らすことができます。
まとめ: 最適な運用方法は十人十色
月額課金サービスにおけるクレジットカード決済の運用方法について、下記3つの違いをご理解いただけましたでしょうか?
・全件オーソリ運用
・洗替+オーソリなし運用
・洗替+全件オーソリ運用
どの運用方法が最適かどうかは、サービス自体のライフステージ、システム開発にかけられるご予算、毎月の業務に割ける人的なリソース等によってケースバイケースですので、事業者様からご相談をいただいた際には、状況を細かくヒアリングさせていただいた上でご提案させていただいております。
今回の記事には書ききれませんでしたが、実際には、課金対象者のデータをどのように決済システムにご連携いただくか(システムで自動連携するか、手作業でアップロードするか等)、さらに細かい運用方法についてもご案内させていただいております。
これから月額課金サービスを始めたい、あるいは、月額課金サービスの運用を改善したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください!